国際原子力人材育成イニシアティブ事業について
文部科学省では平成22年度より国内における多様な人材育成支援を展開してきました。主に大学等を対象に、公募により、それぞれの機関内における横断的な連携・協力関係を構築するための取組について、1課題あたり3年間の支援を実施してきました。
一方、東京電力福島第一原子力発電所事故による原子力停滞を受けて、大学等における人材育成機能が脆弱化しており、単独で体系的な原子力教育を提供することが可能な大学等は、近年減少傾向となりました。また、現時点では、そうした体系的な原子力教育・教員を備えている大学等においても、外部講師に依存する機会が増加するなど、年々、教育機能・基盤が衰えている状況です。
原子力安全の確保や更なる向上を図るとともに、原子力関連技術のイノベーションを促進するためには、これらを実現する人材の育成・確保が必要です。
こうした我が国の教育現場が直面する課題に対して、短期的・限定的な取組では不十分との認識の下、令和2年度に、国全体の機関横断的な取組への支援を強化すべく事業を見直しました。これまでの3年/課題という短期的な支援形態も見直し、7年間を対象とする中・長期的な人材育成策を公募・実施しました。令和2年度のFS採択を経て、複数大学・機関の連携による相補的かつ持続的な取組として、令和3年に未来社会に向けた先進的原子力教育コンソーシアム(Advanced Nuclear Education Consortium for the Future Society:ANEC)を設立しました。
ANECでは、原子力関係学部・学科のみならず、広く他分野の学生 (周辺層)に対する導入的なアプローチを行い、原子力分野全体の裾野拡大と、原子力に関する基礎的な知見を有する学生の育成を主な目的の一つとして位置付け、活動を展開しました。
令和3年度、令和4年度は、ANECの活動を継続するとともに、多様な社会的要請に応え得る幅広い人材育成ニーズを踏まえ、現状のコンソーシアムではカバーしきれていない教育機能を補強するための公募を行いました。
令和6年度も引き続き現状のコンソーシアムの発展・拡充に寄与する取組について公募を行いました。
プログラムディレクター(PD)、プログラムオフィサー(PO)体制について
本事業では、優れた成果を生み出していくため、PD及びPOを配置し、PD及びPOの下で実施課題の審査・選定、運営管理、評価等を実施します。
PD | 山本 章夫 名古屋大学 大学院工学研究科 教授 |
原子力の安全性を確保するためには、総合工学である原子力の広い学術分野をカバー出来る人材を育成する必要がありますが、一方で個々の高等教育機関における原子力工学関係の教育機能は低下傾向にあります。この人材育成事業は、このような状況を打開するため、日本全体として原子力の教育基盤を確保することを目的として、令和2年度にスタートいたしました。本事業全体として、効果的な原子力教育を進められるよう、取り組んで参ります。本事業の成功は、全てのステークホルダーのご関心とご協力にかかっておりますと考えております。引き続きのご支援・ご指導をよろしくお願いいたします。 | |
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PO | 黒﨑 健 京都大学 複合原子力科学研究所 所長・教授 |
原子力分野に進学する学生数の低下や大学内での組織再編などを背景として、一つの大学で原子力を系統的に教育するということは、もはやできなくなっています。一方で、原子力人材に対する需要は引き続き高く、原子力の教育機関として、優秀な人材を輩出し続けなければなりません。今回、文部科学省の事業のもと、全国の原子力に関係する大学や関係機関が集まり、我が国全体として原子力教育を推進する枠組みが構築されました。各参画機関の持つ強みを共有し、弱みを補いながら、体系的な教育カリキュラムや実験実習教育の構築、国際展開、産業界との連携等を通じて、我が国の原子力分野の人材育成機能の維持・充実に寄与していきます。 |